東京地方裁判所 平成5年(ワ)2515号 判決 1993年11月18日
東京都<以下省略>
原告
X1
右同所
原告
X2
右両名訴訟代理人弁護士
石戸谷豊
東京都千代田区<以下省略>
被告
大和証券株式会社
右代表者代表取締役
A
右訴訟代理人弁護士
小村享
同
内藤満
主文
一 被告は原告X1に対し、金一八九万四七〇一円及びこれに対する平成四年九月一日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
二 被告は原告X2に対し、金二六四万一七五五円及びこれに対する平成四年九月一日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。
三 訴訟費用は被告の負担とする。
四 この判決は、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一原告らの請求
主文と同旨。
第二事案の概要
一 本件において原告らは被告に対し、被告が原告らに無断で、別紙買付目録記載のとおり、原告X1について金一九三万二九七八円分、原告X2について金二六九万五三五六円分の投資信託を原告らが被告に預け入れている預託金で購入したとして、右各無断買付に使用された原告らの各預託金の内金として、原告X1分について金一八九万四七〇一円、原告X2分について金二六四万一七五五円及び右各金員に対する原告らが被告に預託金の返還請求をした日以後の平成四年九月一日から支払済みまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
二 争いのない事実等
1 被告は、証券取引法に基づき証券業の免許を受けた証券会社である。
2 原告らは、昭和五二年ころから、被告大森支店の顧客となっていた。
3 昭和六三年ころからは、被告大森支店証券貯蓄課B(B)が原告らの担当となっていた。
4 被告は原告らについて、原告らの被告に対する預託金を使用して、別紙買付目録記載の投資信託の買付けをした。
5 原告らは被告に対し、平成四年八月末ころ、別紙買付目録記載の投資信託の買付けは被告が原告らに無断でしたものであるとして、被告が右買付けに使用した原告らの被告に対する各預託金の返還請求をした(弁論の全趣旨)。
三 争点
被告が原告らについてした別紙買付目録記載の投資信託の買付けは原告らに無断でされたか。
第三争点に対する判断
一 被告は、原告らが無断買付けと主張している別紙買付目録記載の投資信託の買付け(本件買付け)は、原告らの承諾の下に買付けたものである旨主張しているので、この点について検討する。
本件証拠(乙一三)によれば、一般的には、被告が顧客のために本件買付けのような取引をした場合は、買付け約定後二、三日以内に取引報告書が買付け者の届出住所宛に郵送され、本件買付けの中のステップのような投資信託の買付け代金が入金扱いをされた場合は、「ステップご入金の証」(乙一〇)が顧客に引き渡されること、顧客が取引明細書方式の申込みをしたときは、投資信託等の買付け、売付け等により預託金の残高に変動があった場合に、その残高を明示した取引明細書が顧客に郵送されるという仕組みがあることは一応認められるが、本件においては、本件買付けがされた後に現実に原告らに取引報告書が郵送された事実、本件買付けの中のステップの購入について、現実に原告に「ステップご入金の証」が郵送された事実、及び本件買付けの後に現実に原告らに取引明細書が送付された事実は、いずれもこれを認めるに足りる証拠はない。
被告が、本件買付け中のステップの購入について、原告らが被告に対して申込書を送付しているとして提出している積立投資ステップ(パーソナルライフプラン)取引申込書(乙五、六)には、原告らの氏名住所の記載があり、かつ、原告らの印鑑が押捺されていることが認められるけれども、本件証拠(甲一、二、原告X1、原告X2)によれば、右各取引申込書(乙五、六)の原告らの氏名住所は原告らにおいて記載したものではないこと、また、原告らは、右取引申込書に印鑑を押捺した事実を否定しており、これが原告らにより押捺されたものであることを認めるに足りる証拠はない。
他に、本件買付けの中のステップの購入について、被告が原告らに買付けの承諾を得ていたことを認めるに足りる証拠はない。
また、本件買付け中のハイブリッド・オープンという投資信託の買付けについても、原告らの承諾があったことを認めるに足りる証拠はない。
以上によれば、被告は原告らに無断で本件買付けをしたものといわざるを得ないというべきである。
二 右事実によれば、原告らの本訴請求は、いずれも理由があるから、これを認容することとし、主文のとおり判決する。
(裁判官 濵野惺)